YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLEとSEESでは、2013年リリースの『LAND』がバンドサウンドで演奏されました。もとはファンタジー色の強いこの曲が、なぜバンドになったのでしょうか。本記事では、2022年版『LAND』に込められた意味を、2013年当時との違いから考えていきたいと思います。
『LAND』はどんな曲?
『LAND』は、2013年にリリースされたゆずさんのオリジナルアルバム『LAND』のタイトル曲。同アルバムには、東日本大震災が強く影響している曲が多く収録されています。この曲はアルバム共に、メッセージ性が強いと評されることも多々あり、過酷な状況に置かれながらも「一世一代の転機 もしかしたら今かも」と、必死にもがく内容の歌詞が綴られています。一方サウンドはファンタジー色が強く、この雰囲気はアルバムジャケットやPVにも反映されています。
2022年『LAND』の演奏
YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLEと、セットリストを大幅に変更した追加公演SEESでは、どちらの公演とも『LAND』が演奏されました。しかし、アルバムに収録された当時(2013年)と比べるとファンタジー色は無く、ドラムとエレキギターによるバンドサウンドで、ある意味「身近」な印象を受けます。
ではなぜ、2013年では非現実的な雰囲気が表現され、2022年にはそれが取り払われていたのでしょうか。私は、ライブ開催当時に起きた災害の性質の違いが、『LAND』の演奏の違いに反映されたからであると考えました。
2013年との時局の違い
2013年、『LAND』のリリース前に起きた災害は、東日本大震災です。被災した人々、地域は、普段の生活の中では想像することさえ難しいほどの惨い状況に置かれました。この「実感に事欠けている」という表現をするため、そして血生臭さをオブラートに包んで大勢に聴きやすくするため、ファンタジー色の強いサウンドになったと考えられます。
一方、2022年の災害はコロナウイルスの蔓延です。恐らくどの地域のどんな人もウイルスの影響を受け、私たちの生活が変わり果てていくのを実感したことでしょう。在宅ワークを余儀なくされたり、近くの飲食店がなくなったり、レジャーなんてもってのほか。この災害は誰もが共有し、生活と隣り合わせでした。PEOPLEとSEESも、ライブでの声出し禁止、ツアーグッズでのマスクの販売、ライブ中の喚起タイム等、ウイルス対策のもとに開催されています。この身近さ、災害と隣り合わせの感覚こそ、バンド演奏によって『LAND』からファンタジー色が取り払われた由縁ではないでしょうか。
まとめ
同じ曲であるにも関わらず、ライブでの演奏が180度変わった『LAND』について、以下のように結論づけました。
- 『LAND』は日本で起きた災害と、その時の社会環境を反映する曲。
- リリース当時(2013) → ファンタジー色の強いサウンドで東日本大震災の非現実感を表現するとともに、惨さをオブラートに包んで飲み込みやすく。
- PEOPLE、SEES(2022) → ファンタジー色を取り去り、コロナウイルスが日常と隣り合わせであることを表現。
いかがでしたか?2022年版『LAND』は、YouTubeのYuzuOfficialから聴くことができます。ぜひ、記事の感想や違う視点からの楽しみ方等、コメントお待ちしております!