ゆずが掲げるテーマ「死と再生」、本当はいつから?Ritaの鹿モチーフは偶然なのか

死と再生を象徴する鹿と蝶 「ゆず」について

 ゆずアリーナツアー2024-2025図鑑のテーマは「死と再生」。本記事では、ゆずさんがそのテーマを掲げた時期、そして「死と再生」をどのように表現してきたかを考察したいと思います。

「死と再生」が初めて使われた時期

 「死と再生」という単語が最初に確認できたのは、CINRAの2024年8月1日号(1)。『ビューティフル』のテーマとして「死と再生」という言葉が初めて登場しました。そんな『ビューティフル』ですが、リリースは上記CINRAインタビューの約1年前、2023年8月23日。当時はRitaツアー(2023年5月21日〜8月10日)が終わったばかりであり、『ビューティフル』の制作期間は、Ritaの公演期間と被っています。

 このことから「死と再生」というテーマの表現は、Ritaツアーの頃から試みられていたのではと思うようになりました。これについて考えるため、Ritaから現在(図鑑本公演)にかけての「死と再生」に関わる表現・ライブ演出をまとめたいと思います。

Ritaで用いられたキャラクター

 Ritaのモチーフは、2頭の鹿でした。実は鹿という動物は「死と再生」を象徴すると言われているそうです(2)。

鹿は立派な角を持っています。それは一年かけて成長し、春頃に生え替わります。そのため死と再生を象徴する動物とされてきました。

國學院大學メディア

 Ritaの鹿は2頭横並びになっており、右側の鹿には涙ボクロがあります。右側に立っている、涙ボクロのある人物と言えば、岩沢厚治です。という事は左の鹿は北川悠仁。どう見てもあの鹿は、ゆずさん自身を表していると言えるでしょう。角が生え替わる鹿自体がゆずさんを表していますので、あのキャラクターではゆずさんの再生を意味していると考えました。

 Ritaは声出しが初解禁されたツアー。ここでゆずさんが「俺達ゆずは、再生する」というメッセージを込め、鹿×ゆずのキャラクターを用いたのかも知れません。

 そう考えると、Ritaにおける「死と再生」の鹿モチーフでの表現は、「誰かの為に」やってきたライブが、コロナ禍で「誰かの為に」ならなくなったことを「死」に。声出しまで解禁され、コロナ禍以前のライブの形を取り戻したRitaツアーを「再生」に対応させたと捉える事もできます。

もう一つの「死と再生」

 『図鑑』は『ビューティフル』から放たれたものが『ビューティフル』に還る作品と言われており(3)、そのテーマも「死と再生」です。しかし、コロナによる、ライブという特技の「死と再生」は既にRitaで表現済み。では、『ビューティフル』での「死」とは、そして「再生」とは、一体何でしょうか。

死と再生の「死」の要素

 ライブ中の演出で、明確に「死」が表現されたことはあったでしょうか。最も大掛かりに描かれたのはおそらく、Kアリーナこけら落とし公演HIBIKIの『ULTRA HIBIKI PARTY』です。10年後の未来からY2−TARO(ゆずたろう)というロボットがやって来てパーティーが始まるのですが、彼がわざわざ未来から来る理由がただ事ではありません。それは、人がいなくなったから。スクリーンには、争いや災害で人がいなくなっていく様子が映し出され、まさに人類絶滅さながらの演出でした。

 しかし気になる点もあります。それは、人がいなくなるまで、たった10年しか経っていない事です。したがって、この人類絶滅は何かの比喩であると考えました。それは、ゆずさんのお客(リスナー、ファン)がいなくなる比喩だったのではないでしょうか。

 けれどリーダーの北川さんには、「お互いのステージにもし誰もお客さんが入らなくなっても、俺たちだけは拍手を送りあおう」というような仲の親友がいます(4)。ですので、もしも本当にお客が絶滅する時がくるとすれば、それはその親友までもを失った時なのかも知れません。

 また、その10年後の絶滅から、10年前の今(HIBIKIライブ中)に遡ってゆずさんが登場する際、RAKUENのイントロが流れていたのも印象的でした。ここでは「人がいるライブ会場=楽園」と表現した可能性を考えました。

図鑑では客席を極楽浄土に見立てた

 図鑑ではどうでしょう。ライブ冒頭、ステージのスクリーンには、気球を飛ばしてそれが落ちる映像が流れます。その後、蝶が羽ばたいてゆく映像や、観客席に蝶が舞い降りてくる演出がありました。蝶は生や死、復活の象徴であり、死後の魂を極楽浄土に連れて行く存在と言われています(5)(6)。

 そんな蝶ですが、飛び立つ場所はステージ、そして降り立つ場所は客席でした。ライブ中、ステージから客席へ流れるものといえば、音楽です。図鑑では、音楽を魂に、客席を極楽浄土に見立て、音楽が誰かに届くことをもってして「再生」としたのではないかと考えました。

 以上より、『ビューティフル』では、音楽を聴いてくれる人がいなくなることを「死」としてHIBIKIで表現したと考えました。そして、音楽が誰かに届くことを「再生」とし、図鑑ツアーにおいて、ステージから飛び立った蝶が客席に舞い降りる演出で表現したのではないでしょうか。

まとめ

 今回は、図鑑の『ビューティフル』だけでなく、Ritaでも「死と再生」が表現されていた可能性について考察しました。Ritaでは、コロナでライブができなくなり、ようやくコロナ前の形で再開できたことを「死と再生」に。鹿のモチーフを使ってゆずのアイデンティティ「ライブ」の再生を表現したと考えました。

 一方『ビューティフル』では、その音楽を聴いてくれる人がいなくなることを「死」、音楽が誰かに届くことを「再生」として表現していると考えました。

 いかがでしたでしょうか。この記事は追加公演前に書いていますので、これから一体どうなるのか、この考察がどれくらい合っているのかは分かりません。ですので、追加公演を楽しみに待ちたいと思います。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

参照

  • (1)CINRA2024年8月1日(https://www.cinra.net/article/202408-zukanyuzu_mrymhcl)
  • (2)國學院大學メディ(https://www.kokugakuin.ac.jp/article/150973)
  • (3)ゆず誌百五十五巻
  • (4)「中居正広の金スマスペシャル」TBS系2022年4月8日
  • (5)蝶の縁起|暮らし歳時記(https://www.i-nekko.jp/matsuri_asobi/matsuri_haru/2019-031410.html)
  • (6)図鑑とビューティフルの全て|横浜ビデオズhttps://youtu.be/0dRujOkHiLk?si=z9ZAdcib9roV3OnV

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